プロンプトは「命令」ではなく「設計」である
ChatGPTやClaudeに「ちゃんと伝わらない」「思った通りに出力されない」── 多くのユーザーが感じているこの違和感の正体は、「プロンプトを命令だと思っていること」にあります。
AIは万能な理解者ではありません。むしろ、「なんとなくの空気」や「あいまいな表現」に対しては不器用です。だからこそ必要なのが、“設計図としてのプロンプト”という考え方です。
プロンプトとは、「何をしてほしいか」「どのように応えてほしいか」「どんな前提や視点で対応してほしいか」── これらを、順序だてて“構造的に”提示する指示文のことです。
プロンプトを設計するということは、「AIという優秀だが不器用な部下」に、最適な指示を出すこととよく似ています。目的・条件・文体・出力形式などを一つひとつ丁寧に与えることで、ようやくAIは“意図を汲んだ成果物”を返してくれるようになります。
プロンプトは「会話の地図」でもある
人とAIは、まるで初対面の会議のような関係です。相手(AI)に期待していることが多いのに、伝える側(ユーザー)がゴールや前提を示していないことが多い。そこでプロンプトは、「会話の地図」になります。
- どこから話を始めるか
- どんな道筋を通って答えてほしいか
- どこで終わって、どうまとめるか
この地図を描ける人だけが、AIと“通じ合える会話”を実現できます。
また、「会話の地図」はAIモデルごとに少しずつ“読み方”が異なります。ChatGPTに通じる構成がClaudeでは通じにくい、逆にClaudeでは共感や情緒的な前提を意識した方がよい、などモデルによって会話スタイルも変化します。
この違いを踏まえたプロンプト設計が「上級者への第一歩」とも言えるでしょう。
📦 よくあるつまずきポイントと改善例
例①:「転職活動のアドバイスちょうだい」
Claude
❌ プロンプト: 転職活動のアドバイスちょうだい
→ ChatGPTの回答:
「自己分析をして、職務経歴書を整え、求人に応募して、面接対策をして…」という誰にでも当てはまる内容ばかり。
✅ 改善プロンプト:
30代で未経験業界に転職を考えています。面接で使える自己PRの具体例を、やや控えめな性格の人向けに教えてください。
→ ChatGPTの回答:
「私は前職で営業事務を5年担当し、正確なデータ管理とチームサポートを重視してきました。表に出るよりも、裏方として支えることにやりがいを感じています。新しい業界でも、丁寧な仕事と周囲との信頼関係を築く力を活かして貢献したいと考えています。」
例②:「ブログタイトル考えて」
❌ プロンプト: ブログタイトル考えて
→ ChatGPTの回答:
・健康な毎日を目指して
・体にやさしい生活習慣
・元気の秘訣教えます!
✅ 改善プロンプト:
50代男性向けの健康ブログで、やさしい関西弁トーン。読んで元気になるようなタイトル案を5つ、ユーモアも少し加えて。
→ ChatGPTの回答:
1. 健康はボケ防止のスパイスやで
2. なんや元気やん!と言われたい日記
3. 笑う門には血圧も下がる!
4. しんどいのは、だいたい気のせいや
5. 薬より効くかもしれん、日々の習慣
例③:「3歳児に地球温暖化を説明して」
共通プロンプト:
3歳児に“地球温暖化”を説明する文章を作って。
ChatGPT:
地球は大きなふうせんみたいな星で、みんなが使うくるまやエアコンが、空にあつい空気をたくさん出すんだよ。そのせいで、地球のふくがどんどんあったかくなってるの。
Claude:
むかしむかし、地球さんはとても元気でした。でもね、たくさんのくるまや、工場から出るけむりで、地球さんのおふとんがどんどん分厚くなって、あつくなってきたの。おふとんがあつすぎて、南極の氷もとけてきちゃったんだ。だから、みんなで地球さんのために、電気をだいじにしたり、木を植えたりするんだよ。
この章のまとめ
- プロンプトは「命令」ではなく「設計」である
- AIには丁寧な構造と前提提示が必要
- プロンプトは“会話の地図”としての役割を持つ
- モデルごとの特性を意識した設計力が、実践では重要
→ 次章では、実際にどういう構造でプロンプトを組み立てるのか、その「基本形」について解説します。