相手によって“言い方”を変えると、AIの反応はこう変わる
プロンプトにおける「伝え方の違い」とは
前章では、プロンプトに必要な構文と要素を設計することで、AIに意図が伝わりやすくなるという基本を解説しました。
しかし、それだけではまだ不十分です。同じ構文・同じ情報量でも、“言い方”次第でAIの反応はまったく変わるのです。
たとえば、「説明してください」と「わかりやすく教えてください」とでは、出力の語調やスタイルが変わります。
さらに「やさしく教えて」「論文風にまとめて」などの指示を加えると、出力される文体や構成まで大きく変化します。
この章では、文体・命令口調・敬語・語調・対象視点など、「伝え方のニュアンス調整」に焦点を当てて解説します。
AIが受け取る“言い方”のニュアンスとは
大規模言語モデル(LLM)は、過去に学習した膨大な文脈パターンから、次の語や構成を予測して文章を生成します。
このとき、入力されたプロンプトの語調や命令の強さ、丁寧さなども、出力文の参考データとして使われます。
そのため、同じ意味の指示でも「どんな言葉で伝えたか」によって、AIは“違う雰囲気”の返答を出すことになります。
以下の例を見てください。
| プロンプト例 | 想定される出力の特徴 |
|---|---|
| AIの仕組みを説明してください。 | ビジネスライクで丁寧、要点を簡潔にまとめた文体 |
| AIってどう動いてるの?ざっくり教えて! | カジュアルな口調で、会話的かつ砕けた表現 |
| 小学生でもわかるように、やさしく教えてください。 | 比喩やたとえ話を多用した、やわらかい文体 |
モデルごとの「性格」と伝え方の相性
さらに注意すべきは、AIモデルごとに“性格”のような反応傾向があるということです。
同じプロンプトでも、ChatGPTとClaudeとでは出力のスタイルが異なります。
| モデル | 特徴 | 相性のよい伝え方 |
|---|---|---|
| ChatGPT | スピーディ・合理的・実務的 | 命令文+構造指示が有効。「〜してください」「箇条書きで」など |
| Claude | 思慮深く、共感重視。長文が得意 | 文脈や背景を含めた丁寧な語りかけ。「〜について教えてほしい」など |
| Gemini | 情報量が多く、やや抽象思考寄り | 制約条件を加えた明示的なプロンプト。「〜を含めて」「〜を除外して」など |
モデルの“得意な言い回し”を知っておくと、出力のブレやズレを未然に防ぐことができます。
演習問題:伝え方を変えて反応を見てみよう
以下の問題は、プロンプトの「語調・文体・伝え方」を意識して、出力の変化を体験することを目的としています。
問題1:語調を変えて比較
同じテーマ「AIとは何か?」について、以下の3つの口調でプロンプトを出してみて、出力の違いを比較してください。
- A:AIについて説明してください(丁寧・命令形)
- B:AIって何?ざっくり教えて(カジュアル)
- C:AIの概要を、論文風に300字以内でまとめてください(フォーマル)
問題2:モデルごとの違いを体験
問題1のプロンプトを、ChatGPT・Claude・Geminiでそれぞれ試し、語調・構成・情報量の違いを観察してください。
問題3:出力スタイルの変化を指示で誘導する
以下のテーマについて、出力形式の「スタイル」に関する指示を2種類作成してください。
テーマ:「AIと人間の違い」
- A:会話形式で、登場人物がAIと人間になるように
- B:中学生にもわかるように、ストーリー仕立てで
問題4:曖昧なプロンプトを修正せよ
以下のプロンプトには“言い方の指定”がありません。どうすればAIがより適切に反応するか? 改善してください。
プロンプト:最近のAIの進化について教えて
問題5:読者を変えて伝え方を調整
「生成AIの活用方法」というテーマについて、以下の対象ごとに伝え方を変えたプロンプトを作ってみてください。
- A:高校生向け
- B:企業の管理職向け
- C:高齢者向け
まとめと次章予告
プロンプトの「構文」だけでなく、「伝え方」──つまり文体・語調・依頼のスタンスなどを工夫することで、AIはより人間らしく、的確に応答します。
モデルごとの特徴も踏まえながら、“言葉選び”を調整することが、中級プロンプト設計の大きな一歩です。
次章(2-3)では、さらに「出力形式の指定」「情報の粒度コントロール」など、出力精度と意図の一致度を高めるテクニックを解説します。